はじめに

 今から約三年前の高槻市長選挙の直後、読売新聞は「高槻市長選挙で初当選を決めた浜田さんは……民主、自民、公明三党からの推薦のほか、共産党からの応援も受けた」と報じた。

平成23年4月25日読売新聞

 ウィキペディアには「オール与党」とは、「日本の、特に地方自治において、日本共産党以外の全ての国政政党が与党化する現象のこと」とある。私が議員を務める高槻市議会では、このように、共産党も与党となっているから、「超オール与党体制」といっていいかもしれない。

 国会では鋭く対立する与野党が、地方では相乗り。議会はオール与党体制。よくある話だ。そうでないのは、沖縄や、大阪維新の会が強い大阪府・大阪市、河村市長の名古屋、少し前の阿久根市など、少数だろう。

 こうした与野党相乗り・オール与党体制について、あまり良いことではないと漠然と感じている人は多いはず。けれども、では具体的にどのような弊害があるのか答えられる人はあまりいないだろう。自分の住んでいる街の議会がどのような構成なのか、どういったことをしているのか、どんな問題があるのかさえ、ほとんど知らない人や、そもそも無関心の人が多いのではないか。

 仮に行政や議会に関心をもっていたとしても、具体的にどんなことが行われているのか、内部の事情を知るのは非常に難しい。私の経験上、彼らはたいてい、悪いことほど隠したがる。警察に逮捕されたり、マスコミに報道されたりしない限り、それを自ら公表することはまずない。

 世間の多くの人は勘違いしているようだが、議員であっても、行政の内部のことをすべて知ることができるわけではない。議会に上程される予算案や条例案などに関して役所が説明することは基本的に認識しているが、それ以外については、資料を出させ、現地を調査し、関係者から事情を聞くなどしなければ把握できない。そのうえ役所は、しばしば資料の提出を拒み、ひどい時には公文書を改ざん・廃棄し、ごまかし、嘘をつく。少なくとも高槻市ではそうだった。

 私が議会で指摘しても、たいてい部長が不誠実な答弁をするだけ。市長は、基本的にはだんまり。時々とぼけた答えを返したり、逆ギレしたりはしたが、真正面から答えたことはほとんどない。

 議会がやる気になれば、予算案に反対したり、百条委員会を設けて追及したりするなどして、行政側に改善をさせることができる。しかし、議会は数こそ力。過半数を占める与野党・無所属の議員らが相乗りして市長を支えるような状況では、何事もなかったように、多数の力に押し切られる。議員一人の無力さを何度感じたか。

 市長与党の多くの議員たちは、議会で行政を責めるような素振りを見せることもあるが、警察沙汰でもない限り、最終的には行政の不正に目をつむり、市長の支持団体でもある互いの支持母体へのバラマキを見逃してきた。  高槻市において、それはどんなものだったのか。まず、私が本格的に不正を追及する最初となった、高槻市バス「幽霊運転手」事件について述べる。

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