おわりに ~地方議会の構造改革について~

 今年三月、橋下徹大阪市長が出直し市長選挙で再選した。

 しかし、出直し市長選で圧勝しても、議会との関係は変わらないので、大阪都構想の実現は前途多難だろう。

 仮に、大阪都構想が実現し、大阪市がいくつかの特別区になるとしても、その特別区の区長と区議会との間で同様の対立が起きれば、改革を進められない可能性が高い。

 かといって、前市長時代のような、あるいは今の高槻市等のような与野党相乗りがよいとは思わない。様々な団体へのバラマキが行われやすくなってしまう。

 では、どうしたらよいのか。解決策は、①投票を義務化と、②議員の半分を裁判員のように有権者から無作為で選ぶことではないかと私は考えている。

 選挙で選ばれた議員は議会でオピニオンリーダーとなって議論を引っ張り、無作為に選ばれた議員は議決に市民感覚を反映させる。低い投票率では特定の組織・団体の代弁者のような議員の比率が多くなってしまい、いくら首長等が正論を説いても組織の利益を優先するだろうから、こういう人が選ばれにくいよう投票率一〇〇%に、すなわち投票を義務化する。それでも選挙に立候補しようという人の多くは支持団体の影響を受けていることだろう。そうすると議会での議論・判断が偏ってしまう可能性があるので、無作為に選ばれた「市民議員」(私の造語)に議案の採決に加わってもらう。議員が「市民議員」とは議場以外で接触することを禁止すれば、根回しも効かなくなるので、議場で説得するしかない。多くの「市民議員」は正論でなければほとんど受け付けないはずだ。こうすれば、正しいことが行われやすくなるのではないか。

これこそが私は真の議会改革ではないかと私は考える。こうでもしないと議会で適切な結論を出すのは難しいのではないか。

 裁判でさえ無作為抽出で選ばれた裁判員を参加させているのだ。難しい司法試験を通った裁判官がいるのに。だとすれば、地方議会には、なおさら裁判員のような、より民意を反映させる仕組みが必要ではないのか。

議員になるのに必要なのは、選挙に当選することだけだ。資格も学歴も必要がない。有権者に選ばれたことだけが議員の立場の拠り所だが、その議員の生みの親たる有権者は、一票を投じた議員の議会での発言や行動をほとんど知らないだろう。その有権者と議員との溝を、「市民議員」の制度は埋めることができるのではないか。

 現状で与野党相乗りを打ち壊すのは至難の業だ。一つの選挙区から数十人を選ぶ大選挙区制では、組織票を効率的に分配できる政党が有利なのは当然。ましてや低い投票率であれば、それらが獲得する議席の割合は一層高まる。やはり投票の義務化と「市民議員」の制度が必要だ。

 日本のためを想うなら、地方議会を本当に変えなければならないと考えるなら、是非これを実現すべきだ。それを、与野党相乗りの高槻市政の現実の中で強く感じている。

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