第三章 他部署でも違法な有給職免が

◆組合活動や部落解放活動にも有給職免

 幽霊運転手事件では、前述のとおり、違法な有給職免の存在も明らかとなった。交通部でこのようなことがされているなら、他の部署ではどうなのか。情報公開請求をして調べたところ、市長部局、教育委員会、水道部でも行われていることが判明した。

 労働組合・職員団体には、自治労系(民主党系)と共産党系のものがあり、規模は自治労系のほうが大きい。だが、有給職免については、共産党系の団体がより多く取得していた。

 自治労系労組の上部団体「連合」の集会は、観光地で宿泊を伴うものが多く、中には、スポーツ大会の主将会議・抽選会などというものもあった。こうしたものに、公金から違法に給与が支給されていたのである。

 組合活動についてだけでなく、部落解放活動についても、有給職免が認められていた。高槻市の職員でありつつ部落解放同盟の役員である者らも、違法な給与支給を受けて活動を行っていたのである。

 政府は、昭和四〇年代から、毎年のように、違法な条例の運用をすることで有給職免を行わないよう、地方自治体を指導していた。高槻市はこれを無視してきたのだ。

 私は平成一九年九月の議会でこの問題を追及。高槻市役所が違法性を認めないので、翌年の一月一八日に住民監査請求を行った。監査委員は、例に漏れず、何の勧告も行わなかったので、四月一〇日に住民訴訟を提起した。

 住民訴訟で行政側が負ければ、職員や関係者が個人的に金銭を賠償等させられる場合がある。このように裁判の結果に利害関係がある者は、補助参加という形で訴訟に参加できる。この有給職免の住民訴訟では、自治労系・共産党系とも、住民訴訟に補助参加してきた。部落解放同盟のほうは参加してこなかった。

 補助参加人らは、高槻市当局と交わしたという一枚の文書を証拠として提出してきた。文書のタイトルは「組合活動に伴う職免の適用について」。労使の合意事項が記載されているという。

 そこには「大会、役員会、四役会議等の本来的な組合活動の会議については、上部団体活動を含め原則的に許可する」、「スポーツ大会等の競技会については、種類と人数が多いため地区予選の準決勝以上の競技について許可の対象とする。なお、競技役員については二名までを許可の対象とする」といったことが記されていた。

 この文書には「H.3.7.」と、労組側によれば平成三年七月の日付があるが、公文書であれば付されている文書番号がない。公印もない。この文書は、私が情報公開請求した際には出てこなかった。つまり市役所側・当局側が、正規の公文書として扱っていないものというわけだ。

 要するにこれは密約なのだ。そのようなものが、公金支出の根拠として認められるはずがない。

 労組側としては、この合意に基づき有給職免の許可を得てきたから労組に責任はないという主張なのだが、こんな取り決めがあったとしても、違法行為が許されるものではない。

 平成二一年一〇月六日、大阪地裁で判決言渡しがあった。市長部局、教育委員会、水道部それぞれについて、いずれも全面勝訴。

 労組所属の職員や部落解放同盟所属の職員に給与分の不当利得返還請求が命じられたのはもちろんのこと、決裁をした課長だけではなく、市長、教育長、水道事業管理者といった各組織の長も管理監督責任を問われ、賠償が命じられた。その詳細は次のとおりである。

 市長部局分(平成二〇年(行ウ)第七一号)

 ・市長個人に対して、一九二万〇二九七円。

 ・前の人事課長に対して、二二万六九三一円。

 ・現在の人事課長に対して、一六九万三三六六円。

 ・自治労連(日本共産党系の労働組合)所属の職員一七名に対して、総額一二六万三五〇二円。

 ・自治労(連合系・民主党系の労働組合)所属の職員九名に対して、総額五二万二三一三円。

 ・部落解放同盟所属の職員二名に対して、総額一三万四四八二円。

 教育委員会分(平成二〇年(行ウ)第七二号)

 ・教育長個人に対して、四四万〇九一八円。

 ・当時の総務課長に対して、四四万〇九一八円。

 ・労働組合所属の職員五名に対して、総額二八万〇八六五円。

 ・部落解放同盟所属の職員二名に対して、総額一六万〇〇五三円。

 水道部分(平成二〇年(行ウ)第七〇号)

 ・当時の管理者個人に対して、三五万五七一一円。

 ・当時の総務課長に対して、三五万五七一一円。

 ・労働組合所属の職員五名に対して、総額三五万五七一一円。

 合計で、二七一万六九二六円(重複分除く)。各組織の長と課長には年五%の利息の支払いも命じられた。

 なお、控訴審では、水道部の課長の責任だけ取り消された。控訴審では三件の事件について、別々の裁判官が担当したため、判断が一部分かれたのである。

◆市側の控訴を相乗り議会が承認

 高槻市役所側は、この判決を不服として控訴した。地方自治体が訴訟を起こす場合、議会の議決が必要となる。控訴や上告をする場合も同様だ。一方で、控訴は地裁判決の送達を受けてから二週間以内にしなければならない。議会を招集する時間的余裕がなかったので、市長は専決処分という手続きにより控訴を決定。その後の議会でこの専決処分を承認してもらうよう議案を上程した。

 高槻市は、控訴の理由を、「長年の慣行でもあった本件取扱いを本事件提起前に既に改めており、その改善に努めてきた市長個人等に対して責任を問うことは不当であり、その判断には不服があるため、控訴する」としたが、「長年の慣行」であったとしても、違法は違法である。これも役所の正当化の手であり、真実は、長年違法行為を行って市に損害を与えてきたのであって、それを「慣行」だとごまかして放置してきたのだ。

 国から毎年のように指導を受けてきたのに、労使で密約さえ結んでいた。「改善に努めてきた」とは、どの口が言うのか。私が議会で取り上げたから、やむをえず改善したのではないか。

 私は議員ではあるが、この裁判の原告(控訴審では被控訴人)である。議案の採決の際、当事者として除斥するということで、議場から退席させられた。

 一人の議員は、どちらにも賛成できないと、採決の前に退席。一人は病欠。それ以外は全員賛成で市長の専決処分は承認された。

 労働組合等と関係のある民主党・日本共産党・社民党系の会派はともかく、まさか、自民党や公明党の会派まで賛成するとは。国会で同様のケースがあれば、自公は反対するはずだ。

 与野党相乗りの弊害を、この議案でも感じた。

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